ザウターM1技術研修レポート

2009年4月、当社技術者の佐野雄一がドイツ・シュパイヒンゲンにあるザウター本社へ技術研修に行って参りました。
その研修旅行のレポートです。(文章・写真/佐野雄一)

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6日目 工場研修4日目

毎日、工場ならではのアクションを組み立てる段階や設計寸法のお話しを聴きながらする整調作業は得がたい経験でした。
新しいピアノは整調が安定しておらず変化しやすいのはわかっていても、ザウターの工場では精度を求めてきちんと作業をしています。また工員によって作業のやり方がそれぞれだという事も日本のピアノ工場ではありません。

一つ興味深かった作業で「弦合わせ」という作業があります。一般的には1音に2本または3本ある弦に対してハンマー側を削って同時に接するように調整しますが、ザウターの工場では弦側の高さを変えてハンマーと同時に接するように調整します。
いずれも音に芯が出る等の表現力が増す大切な作業です。ザウターではまだ安定していない弦を重視して、その様に作業しているようです。
工場の窓から黄色いお花が咲いているのが見えます。「この花が咲くと”あぁ、春が来たんだなぁ。”と思うんです」と高橋さんが話してくれました。
この日の午後は2時間、工場長で木工のマイスターであるヤンチュさんへ質問の時間をとっていただきました。またその間にブログでも紹介した新聞の取材がありました! 詳細はブログで・・・。

ここではヤンチュさんへの質問と回答を紹介します。

Q ザウターのセールスポイントを教えて下さい。
A ・他のドイツメーカーに比べて響板面積が大きく、響棒と駒を同時に接着して更に響板にクラウンを付ける独特のプレス方法。有能で長く勤めている人を使って自社で製作しています。
・化粧板などの外装の木材選定を厳しくしています。
・ハンマーは「アーベル」、鍵盤は「クルーゲ」など部品を専門に製作している一流のメーカーのものを使用しています。
・デザイナー「ペーター・マリー」に依頼したインテリア・ピアノがあり、アジア向けモデルなど製造に柔軟性があります。
・性能の高い機械だけでなく、人も優秀でないといけないというのが信条です。

Q 響板はどこのものを使用していますか?
A 響板は一部のモデルは北イタリアの「シレサ」というメーカーのトウヒを使い、ほとんどのモデルはドイツ・スイス・オーストリアの国境に接しているボーデン湖の近くのBregenzerwald(ブレーゲンツァーヴァルト)という森のトウヒを使っています。
また伐採は満月後の月が欠けるときに行います。湖の満ち引きと同じで、その時は根っこに水が落ちているので乾燥させやすいのです。(月が欠けるときに切るということは聞いたことがありましたが、そんな理由があったとは初めて知りました!)
厚さは中心が9mmで外に向かうにしたがって2mm薄くなります。

Q 駒についておしえてください。
A アップライトピアノはブナの積層材を使い、グランドピアノはカエデの無垢材を使っています。更に駒ピンは錆びないようにニッケル・メッキを使用します。フルコンサートピアノにはより振動伝達が良いチタンを使っています。

Q ハンマーの接着にはどんな接着剤を使っていますか?
A 白ボンドに硬化剤を加えたものを使っています。というのも、ハンマーの接着剤は音に大きく影響するので硬化剤を加えています。化学性の接着剤は管理がしやすいのと、数年後の変化の上で信頼性が高いので、ニカワは使っていません。

Q ザウターの今後のピアノ造りの方向性は?
A 価格のために木材の質を下げることはしません。購入後もし売る時にも損をしないように、質の高いピアノを造り、ザウターはドイツ国内でも評価が安定しています。
ピアノの音量追求のために、現行モデルをスタインウェイに近づけることはありません。毎年ザウターの音創りは、お客様の反応に合わせて会議で決めています。

他にもたくさんの質問に答えていただき、ありがとうございました!